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ヨーロッパ和物便り

写真:藤村由紀
藤村由紀
Vol.19 「和食でクリスマスディナー」(更新日:2006.12.29)
年末年始のヨーロッパ和物情報をお届けします

日本は年の瀬も押し詰まり、大忙しの時期ですね。こちらは、クリスマスが終って、あとは「おまけ」のような大晦日のパーティーだけです。やれやれと言うところでしょうか。クリスマスの12月25日には、家族揃ってターキーを食べるクリスマスランチを食べます。でも、それだけではなく、12月は、職場でのクリスマスパーティーや、ご近所を呼んでのドリンクパーティーなど、お呼ばれの多い時期です。テレビでも、そのためのご馳走用にと、料理番組がたくさん組まれています。

さて、今年は、そんなクリスマス編成の料理番組に、和食が加わりました。案内は、イギリスのテレビではおなじみのセレブシェフ、リック・スタインです。イギリス最南西のコンウォールで、地元の新鮮な魚介類を使った料理を売り物にしている有名レストランを経営しています。気取らない自然体で、素材を生かした料理を紹介し、料理スタイルは、デリケートというよりは大胆。繊細な日本の懐石料理とは、かなりイメージが違います。そんな彼が、和食の晩餐を紹介することになったのは、在ロンドン日本大使館からお声がかかったからです。

彼の人気番組に、海辺で採れたばかりの魚をすぐに料理するシリーズがあります。その中で、船の上で「鯖の刺身」を作って同船者に食べさせるシーンがありました。鯖は、イギリスでは、さほど人気のない魚なので、安い食在です。鯖をスライスして「はい、どうぞ。」と。同船者が(カメラへのお世辞なのかどうか)「美味しい」と言うと、「たった4ペンス(約8円)で、こんなご馳走が振舞える」と御満悦です。でも、いくら採れたばかりの鯖とは言え、塩でしめるでもなし、酢につけるでもなし、まったくの生の鯖です。それを、ガタガタにスライスしただけでは、日本人の感覚では、「鯖の刺身」とは呼べませんね。

その番組を見ていた日本大使が、「これは大変」とばかりに、この人気シェフを公邸に招き、「日本料理のとは、こんなものではない」と、日本料理の真髄を紹介する番組制作に大使館が協力することになったのだとか。

番組は、まず、東京にやってきたスタイン氏が、大使館の紹介の高級ホテルの部屋の豪華ルームに案内されるところから始まります。日本式のいたれりつくせりのサービスの紹介ということでしょうか。それから居酒屋を探検。安くて美味しいものが食べられる大満足。その後、彼は、築地の魚市場で鮪がさばかれる様子に感心し、食材を見て廻り、場外市場の食堂で舌鼓を打ち、また、元首相と料亭で高級料理を堪能したりと、様々の日本料理を味わいます。日本料理の板前さんや寿司職人さん達の包丁捌きや、職人技の手の動きに驚嘆し、また、刺身包丁の丁寧に作られている様に感心します。大使館の全面協力による番組ですから、かなりヨイショが見え見えなのですが、日本人が見ても、日本料理の繊細さを改めて見直せる、興味深い取材旅行でした。

そして、イギリスに帰ってきたスタイン氏は、大使主催の日本料理の晩餐会をプロデュースします。実際に包丁を握るのは大使館の板前さん二人なのですが、メニューは、スタイン氏が考えるのです。前菜だけは、鰯の地中海風マリネで、西洋料理ですが、後は、懐石のコースです。茶碗蒸しにロブスターを使ったり、松茸の代りにと、イタリア料理の高級キノコのポッチェリーニを使ったりと、「ええっ」という食材が出て来ます。現地食材を使いつつも、手法はあくまでも、オーソドックスな日本料理。ここでも、二人の板前さん達の手際や繊細な仕事振りを褒め讃えていました。イギリスで映像だけでは、実際のお味がどうだったのかはわかりませんが、大使は、「大成功」と、氏の努力を労っていました。

海外の他の大都市でもそうなのでしょうが、ロンドンでも、「日本食レストラン」と名のつくお店はたくさんあります。が、その多くは、現地資本で、日本人の料理人が一人もいなかったりします。先頃、放射性毒物殺人事件で話題になった寿司バーも、その一つです。日本側から、「日本食としての本物度」の目安になるラベル導入を検討中だという話もあるぐらいですから。日本料理は、スーパーでパックで売られているカルフォルニアロールや、トレンディーなヌードルバーのバジリコ入りラーメンだけではない。街頭で仕事帰りに手軽に楽しめる焼鳥から、繊細な芸術品の懐石料理まで、様々なこと。司職人さんには、2週間の寿司コースを終了しただけはなれず、20年以上の修行が必要だということ。そんなことを、この番組で知ってもらえるといいですね。

さて、皆さんのクリスマスはいかがでしたでしょうか。私は、和食ではなく、英国式ターキーでクリスマスを過ごしました。でも、お正月は、おせちの真似事ができたらと思っております。どちら様も、よいお年をお迎え下さい。



▼BBC放送の番組ホームページ
http://www.bbc.co.uk/food/christmas/rick_japan.shtml


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