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とんでもジャパニーズ
映画「ハンニバル・ライジング」 トマス・ハリス原作「羊たちの沈黙」に出てくるハンニバル・レクター。猟奇殺人鬼にして人肉嗜食者でありながら、教養豊かで頭脳明晰な精神科医。その強烈な存在感はアンソニー・ホプキンスの名演で、映画史に残る印象深いものとなりました。 これはそのハンニバルが若き日、いかにして殺人鬼となっていったのか、を描く映画なわけですが、なかなかどうして……とんでもジャパニーズでした(笑)。 戦後リトアニアは旧ソ連領となり、ハンニバルは皮肉にもソ連邦の養護施設として接収された、自分の住んでいた城に収容されるのですが、逃げ出し、叔父がいるはずのパリへ向かいます。しかし、叔父は既に亡くなっており、残されていた叔父の未亡人、レディ・ムラサキ(「村崎」さん? 「ゆかり」の渾名?)と対面、彼女に引き取られるのですが……。 なんなんだ、ムラサキって。いったいどういうネーミングなんだ(未読ですが原作だと「紫式部」のことらしいです)。ええと、映画から推察される彼女のプロフィールは、広島出身で士族の娘。相当な教養と美貌、それから身体能力の持ち主です(剣道をやり、人間の首を持って(笑)バイクを疾走させています)。 演じてるのはコン・リー。SAYURIに引き続いて日本女性役というのは、ハリウッド で彼女が「日本人を演じられる女優」として、定評を築きつつある、ということなんでしょうか。……しょっぱいわ。正直、コン・リーが演じきれてるとはとても思えません。レディ・ムラサキという女性は、戦前に九州士族の家(大阪の陣の絵巻物を所持していた事から、恐らく豊臣方の毛利あるいは福島の上級家臣ゆかりの一族)に生まれ育っているはずなのですが、日本人の私には、さっぱりそうは見えません。 印象ですが、この映画はある程度は「わかって」作っているんだと思います。ディティールが細かすぎるので(日本刀の手入れに使っている丁字油が捜査の過程で取り上げられたりとか)。この映画の脚本を執筆しているのは原作者のトマス・ハリス自身なんですが、確信犯だと思うと、よけい荒唐無稽さがガックリきます。SAYURIの時もそうでしたが、なんでこう、エンターテイメントになると「こういう日本を見せれば(白人には)ウケる」にあっさり流れていくんでしょうねえ。日本での興行収入だって大きいはずだと思うんですが……。 それで映画自体ですが、現在まだ公開中なので、これ以上触れるとネタバレになってしまいます……そうですねえ。前作までが、かなりリアリズムを追求した緻密な話ばかりだったので、正直違和感が否めないですね……。アメリカでは興行成績の落ち込みがかなり早かったみたいですが、納得です。だいたい、ホラーだって何だって、恐怖の対象というのは、正体が分からないから怖いんであって、この映画を期待していた層は、ハンニバルの謎が深まる事を望んでいたと思います。「妹が死んだ事によってハンニバルも雪原で死んだのだ」とポピール警視(ドミニク・ウェスト)の台詞で一種の説明が付けられてしまっていますが、そんなしょぼい理由では皆さんがっかりでしょう。一応その後に別途、明らかになることがあるんですが……。 それはともかくとして、ハンニバルを演じたギャスパー・ウリエルはかなりの好演でした。だいたい名優アンソニー・ホプキンスの演じた役の若い時代を演じるということ自体、かなりの勇気だと思います(容貌似てないしな)。変な役を一度引き受けてしまうと、大同小異のオファーばかりが来るものですが、ぜひ芸域を広げて行ってほしいです。 ▼ハンニバル・ライジング 映画公式サイト http://www.hannibal-rising.jp/ |
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