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日本全国津々浦々
歌舞伎座「六月大歌舞伎:夜の部」 6月の歌舞伎座の夜の演目は 1.「暗闇の丑松(くらやみのうしまつ)」、2.新古演劇十種の内「身替座禅(みがわりざぜん)」、3.「二人夕霧(ににんゆうぎり)ー傾城買指南所ー」でした。
「暗闇の丑松」は長谷川伸が原作のちょっとダークなお話でした。 松本幸四郎演じる主役の丑松は腕のいい料理人ですが、中村福助演じる恋女房お米の姑、お熊(澤村鐵之助)と手先の浪人(河原崎権十郎)を、相手に非があるとはいえ殺してしまいます。一度は死のうとするものの、結局夫婦は手に手を取って逃げ出します。 時は流れ、江戸から逐電していた丑松は、置いて来た女房恋しさに舞い戻ってきます。板橋の宿でわらじを脱ぎますが、相方の女郎は、なんと女房のお米。もちろん丑松は裏切りをなじります。 お米は、江戸逃亡を手助けしてくれたはずの四郎兵衛(市川段四郎)に、脅され、身体を奪われた上、売り飛ばされたのだと言い訳しますが、あの兄貴がそんなことをするはずはないと、丑松は聞く耳を持ちません。とうとう絶望のあまり、お米は首を吊って、死んでしまいます。 丑松は、やっと真実を理解し、人の目を盗んで江戸の四郎兵衛宅へ。四郎兵衛の嫉妬深い女房お今(片岡秀太郎)の挙動から、だまされていたことを得心します。丑松はお今を殺し、その足で湯屋に出かけている四郎兵衛を追います。風呂で四郎兵衛も手にかけ、またもや逃げ出す丑松。 人生の暗闇に一度落ち込んで、そのまま転落し続けていく男の物語が、淡々と押さえた筆致で語られていきます。 で、感想なんですが、……ううーん……。長谷川伸は最近では読む人もあまりいないと思いますが、「瞼の母」や「沓掛時次郎」といった“義理と人情”“任侠”といったテーマで、昭和初めの頃まで多数の作品を発表していた作家さんです。いうなれば、庶民の哀感、そんな哀感を救い上げる庶民のヒーローを描いた作家さんなのですね。 彼自身、横浜で生まれ、三菱造船ドック(いまのランドマークタワーにあるドッグヤードガーデンがその跡地です。隔世の感があります……)で子供の頃から小僧として働き、苦労して叩き上げて新聞記者になり、のちに作家へ転身したという経歴の持ち主です。 この話も、正直に生きて、小さな幸せを手にいれようとした夫婦がふとしたことから不幸にみまわれ、その後はどん底の底を抜くまで救いもないまま転げ落ちていく、そのどうしようもない悲惨さが胸を打つわけですが、うーん、私はあんまり胸を打たれなかった……。 福助はお姫様や人外を演じるのは大変うまいと思いますし、幸四郎も格調高い風格ある役を演じるのが得意ですから、どうもこう……私見ですけど、あんま向いてないんじゃないですかね、これ。 というわけで2幕目の舞踊劇「身替座禅」です。前月に引き続き、主役の山蔭右京をつとめるのは尾上菊五郎。狂言チックなお話だなーと思ったら、やはり狂言「花子」が元のお話だそうです。 山蔭右京は、恋しい花子に会うためにこっそり抜け出そうとしますが、奥方玉の井(片岡仁左衛門)は気の強い性質で、完全なかかあ天下。一計を案じた右京は、一晩座禅を組み、神仏に祈るので、邪魔はするなと言いつけます。 しかし玉の井は油断のならないしっかりもの。念のため、右京は太郎冠者(中村翫雀)に身代わりを命じます。奥方は怖いが、右京の頼みも断れない。しぶしぶ引き受ける太郎冠者。 ところが座禅を組んでいる最中も、玉の井はなにやかやと構おうとし、結局あっさりと身代わりをつとめていたことがばれてしまいます。怒り狂う玉の井は太郎冠者を追い払い(ここがまたおかしい)、今度は自分が太郎冠者の身代わりに座禅を組んで右京を待ちます。 そしてちょーご機嫌で右京が帰ってきます。座禅を組んでいるのはてっきり太郎冠者だと思っていますから、さんざんのろけ倒す右京。最後はもちろん何もかもばれて、ちょん。 先月夜の部の「矢ガモ」からこっち、菊五郎がコメディ上手というのはわかっていましたが、とっても面白かったです。翫雀の太郎冠者も情けなさひとしお。やっぱりこういう役上手だなー。 しかし仁左衛門の嫉妬深い奥方はかなーり怖かったです。そりゃ浮気するのも命がけでしょう……。腰抜かして必死で逃げる菊五郎が……。私、幼い頃から時代劇好きで、仁左衛門もそうですし、「悪党狩り」に出てた菊五郎も見てましたので、なんちゅーかちょっと「はー時代は流れた……」みたいな感慨深いものがありました。 3幕目「二人夕霧」。「廓文章」で有名な大阪の傾城(江戸で言う花魁、つまり高級娼婦です)夕霧とそんな彼女に溺れて身代つぶした藤屋伊左衛門の物語は、夕霧ものとしてバリエーションが多数あるのですが、この話もその一つです。 伊左衛門(中村梅玉)は夕霧(中村魁春)と死に別れ2代目(!?)夕霧(中村時蔵)と夫婦になり、いかにかっこよく郭で遊ぶかを教える、「傾城買指南所」を開いています(あほかい……)。 しかし、借金の取り立てが現れ、身ぐるみ剥がれて弟子にも逃げられ、さすがののんき者もがっくりきてしまいます。で、身ぐるみ剥がれた伊左衛門は紙衣姿なわけです。紙衣は文字通り和紙で作った着物で、落ちぶれてしまった人が着ることが(舞台上では)多いのですが、これは死んでしまった方の夕霧からの恋文なわけですね。 そんな彼が、たまたまその時訪ねて来た、夕霧のいた吉田屋の女房おきさ(中村東蔵)と思い出に浸っていると、なななんと、死んだはずの初代夕霧が現れたのです(ややこしいのでここから1号と呼びます)! 驚く伊左衛門。 そして買い物に出ていた2代目夕霧(これまたややこしいので以下2号)も帰って来てしまい、ここからひと騒動。……と思いきや、伊左衛門は実家からの勘当がとけたとの知らせを受けて、ハッピーエンド。1号2号と連れ立って、小判をご祝儀で撒きながら(帰参が許された直後もうこれか)めでたくおうちへ戻っていくのでした。 えーと、幕が開く前になんだか知らないけど、どーっとお客さんがいなくなってしまいました。えーなんでー?? かわいそーじゃんかー。と最初は思っていたんですがー。 ストーリーをこうして並べるだけで、もう突っ込みどころ満載の爆笑コメディなのはおわかりいただけると思うのですが、なんですか、あまり皆さん笑わんのですよー。ちょっと笑いがこぼれたのは、傾城買のお弟子3人組のときくらいでしょうか。 ていうか、2号が、たこぶら下げて買い物から帰ってくるのなんか、いい感じなんですけど、笑うほどではない。1号と2号に責め立てられてるとこだって、おかしくなきゃおかしいはずなんですけどねえ。前後が笑えるから伊左衛門の1号の思い出に浸るシーンがしんみりするわけじゃないですか。 というわけで、なんだか考え込ませる舞台でした。中村梅玉の情けないけど憎めない若旦那は品がいい、なかなか当たり役なのにもったいない。何かが足りないんですね。何が足りないのかな。またチャレンジして欲しいです。 ▼歌舞伎座 http://www.kabuki-za.co.jp// ▼社団法人日本俳優協会 http://www.actors.or.jp/index2.html ▼中村梅玉オフィシャルサイト http://www.baigyoku.com/ |
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