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香野 恵
Vol.25 新橋演舞場 「五月大歌舞伎:昼の部」(更新日:2007.05.11)
新橋演舞場の五月大歌舞伎 昼の部を見に行ってきました! 平成19年5月1日(火)〜25日(金)の上演です。

昨年に引き続き、中村吉右衛門が中心となって上演される「五月大歌舞伎」。ほぼ出ずっぱりの吉右衛門に甥っ子の市川染五郎、中村富十郎も加わって、なかなか楽しみな舞台です。なにより今回の目玉は、吉右衛門畢生の当たり役、「鬼平犯科帳」の上演。ゴールデンウィークまっただ中の5月3日に見に行ったのですが、銀座も混雑。演舞場もほぼ満席。休日らしい雰囲気でした。

さて、一幕目は「歌舞伎十八番の内 鳴神(なるかみ)」です。修行を続ける鳴神上人(市川染五郎の初役)は朝廷に恨みを抱き、滝壺に龍神を封じ込め、日照りを起こして民人を苦しませています。そこへ現れたのが、絶世の美女、雲の絶間姫(中村芝雀)。彼女は美貌と口舌でたくみに鳴神上人を籠絡し、修法を破って龍神を解放、雨を降らせて逃亡します。騙された事を知った上人は激怒し、人外に変じて姫を追いかけていきます。

この話はオチがないんですよね。雲の絶間姫の口説を楽しんで(はっきりいってエロい)、後半、変じた上人が見せる豪快な荒事芸を楽しむという、名場面だけ集めて適当に話を作りました! みたいな感じです。ある意味とっても歌舞伎らしい演目です。しかし、席が悪くてさっぱり花道が見えませんでした。引っ込んで行くところも、見せ場なんですよね……。

そして二幕目が、いよいよ「鬼平犯科帳(おにへいはんかちょう)・大川の隠居」です。 今回、たぶんこれ目当てで普段は歌舞伎を見ない人も結構来てたと思います。私の並びの席には、老夫婦がお孫さんを連れて見に来ていました。私も幼稚園や小学校の頃、祖母と時代劇を見ていたのでなんだかいい風景だなと思いました(ただ上演してるとき孫に解説するのは止めていただきたいものだ……)。

大川の船頭、友五郎(中村歌六)は、引退した盗人ですが、盗賊取り締まりに江戸市中で名を馳せている、火付盗賊改方の長谷川平蔵(中村吉右衛門)の鼻をあかしてやるために、役宅へ忍び込み、平蔵の父の形見の銀煙管を盗み出します。密偵である小房の粂八(中村歌昇)を通してそれを知った平蔵は、こっそり罠を仕掛けるのですが……。

池波正太郎の原作の中でも、とても好きな話の一つなので、楽しく見ました。チャンバラもなく、ドラマ化するとしたら地味な話なんですが、歌舞伎にはちょうどいいですね。TVシリーズで楽しんでいた人達にとっても違和感なく見られたのではないでしょうか。キャスティングもストーリーも、うまく処理してあったと思います。ちなみに「大川の隠居」というのは、そう呼ばれている大川に住む巨大な鯉のことです。

ところでハプニングがありまして。冒頭、船頭の友五郎が平蔵に呼ばれて船から煙管の火種を渡す場面で、うっかり歌六は竿を落っことしてしまいまして……あわてて下に降りて拾ってしまい、皆、唖然。だって、そこ、大川の水の上なんですよ! 場内しばらく沈黙の後、大爆笑でした。そこへまた、吉右衛門がアドリブで「おめえ、盗賊並みに身が軽いな」(場内の笑い声ではっきり聞こえなかったんですが)とかなんとか。さらに皆、大笑いです。

あと、幕がしまらなくて緞帳で代用したり、なんだかいろいろある芝居でした。しかし、最後決めるところは決めてくれて、友五郎と平蔵の真剣な掛け合いと、互いのわだかまりがとけ、平蔵の正体がわかったところで大川の隠居が一瞬姿を現し、大団円という終わり方は拍手喝采でした。とてもいい舞台でした。

3幕目は「釣女(つりおんな)」でした。狂言舞踊です。襲名したばかりの中村錦之助が演じる大名が、美しい妻を得るため、祈願をこめて釣り竿で美女(中村芝雀)をつり上げます。それを見た太郎冠者(中村歌昇)はうらやましくなり、釣り竿を借りてこれまた妻をつり上げようとするのですが……。連れたのは、なんと醜女(中村吉右衛門)。がっかりびっくり、悲喜こもごもの楽しい演目です。

中村歌昇はしかし踊りが上手です。吉右衛門が、なんというか、……(笑)なんで、不幸中の幸いとでも言うか、逆に醜女の役柄が映えて大変おかしかったです。

ところで、「おお」と思ったのですが、中村錦之助が踊る時、吉右衛門、ちゃんと声をかけて場内の拍手を誘っているのですね。襲名したばかりの錦之助を気遣っていて、さすが座長と思いました。

5月25日(金)までの上演です。お時間が取れる方はぜひ。



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