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お稽古体験レポート!
日本舞踊 坂東流「坂東以津緒先生の日本舞踊教室」前編 −何を基準に拍子を取るの? 何にお辞儀するの?−
道路からお稽古場への玄関をのぞくと、玄関口まで続く飛び石とその周りに砂利配置されていて、ちょっと気持ちがキリっと引き締まる佇まいです。お稽古をつけて下さるのは、坂東以津緒(ばんどういつお)先生です。 体験させて頂く前に、他のお弟子さんが稽古されてる様子を見学させて頂きました。先生が一緒に踊って手本を見せて下さったり、正面で鏡のような動きをして下さったりしながら、5回、10回と繰り返して踊っておられるのを観ているうちに、ひとつ不思議なことに気付きました。何を基準に動いていいのか分からないのです。こっそり、隣のお弟子さんに聞いてみました。 「リズムで拍子を取れないですよね。どうやって次の踊りに移るタイミングを計ってるのですか?」 「リズムじゃないのよ。三味線よ。唄を聴いてしまいがちだけど基本は三味線。でも、わたしも実は、次へのタイミングを計るときこっそり自分の中でイチ・ニと数えてるときもあるの。」 確かに、聞こう聞こうとすると、言葉を追って唄を耳が聞いてしまいそうです。でも、唄の意味さえ実は完全に理解できそうにないのに、三味線の音を聞き分けるのはさらにまた難しそうです。すると先生は、
「というと、踊りでは三味線が指揮者のような役割なのですか?」 「互いが経験を積んだ者同士であれば、唄と踊りと三味線は互いの呼吸に合わせながら舞台を創ってゆくから、必ずしも三味線が指揮者のように一番の基準というわけではないのです。」 「じゃあ、言わばジャズのように、場を出演者の皆で即興で創り上げてゆくような感じが本来はあるわけですね。」 踊りはリズムで踊るのではなく三味線の音で踊るという知識は得たのですが、はてさて、これが自分の稽古で活かせるのか? さあ、わたしの番です。お稽古は着物でします。 まずわたしは、舞台の上で、先生に向かって「宜しくお願いいたします。」と両手をついてお辞儀しました。すると先生、 「小さな女の子もご挨拶してたけれど、あれはね、わたしに挨拶してるわけではないのよ。極端なこと言えば、わたしが舞台の後ろのほうでゴソゴソ探し物をしていたとしても、舞台の上できちんと正面を向いてお辞儀するの。この稽古を始めるときと終わるときのお辞儀は挨拶でなく、これから踊りを始めますという区切りみたいなもので、難しいから小さい子には『踊りの神様にご挨拶』と説明すると納得するみたい。」 わたしも、小さい子への説明、とお話頂いた辺りで、すごく納得。 早速、舞台の真ん中で正面を向き、踊りの神様にお辞儀。で、これただ頭を下げるだけでなく、綺麗に見えるお辞儀の型があると次に教わります。 「このご挨拶は、腰から折って胸を下げる。目線はずっと前を見ながらそのまま胸を膝につける感じよ。」
次に、扇の持ち方を教わりました。そして、娘役の基本の立ち方、足の踏み出し方。本当は、扇をきちんと使えるようになるお稽古から始まるそうです。でも、今日は体験ということで特別に、聞き知っている曲「お江戸日本橋」の1番を選曲下さっていました。 まず、物語と一緒にその所作の1つ1つの意味を噛み砕いてご説明いただきます。大名行列の真似、朝焼けを見て「まあ、日が昇ってきたのねと周りを見渡し、そして提灯の火をそっと吹き消す」様子と、ひとつひとつの情景がはっきり浮かぶように、その物語の中を演じる者になれるようにとお話いただきながら、上手(かみて)で、正面でと先生は何度も何度も一緒に踊って下さりました。お稽古を終えられたお弟子さんも一緒に踊って下さりました。
ひとつひとつ動きに意味があるというのが分かって、とても踊りやすかったです。ここはこんな情景を表しているから、それらしく振舞う「フリ」が付いている。頭の中でその物語の主人公になりきればよいのだと、やっと終わり近くになって気づきました。踊りもお芝居のひとつと言えるのかもしれません。 ただ、頭では分かっても、首と足と手が一緒についていかないのがじれったかったです。先生もお弟子さんもとても一生懸命教えて下さっているのがヒシヒシと伝わってきて、だからこそ今日は絶対教わったことは全部身につけて帰りたいと本気で思い、バラバラの言うことを聞かない身体にムチ打って動かしたというぐらいの出来栄えでした。なのに、先生は、「うまくできてるわよ」と、随所何度か失敗した後に出来たところは褒めて下さり、その一言が舞い上がるぐらい嬉しくて、もっと上手くなりたいと思える時間を過ごさせて頂きました。
振り返ってみれば、これは1対1のお稽古ならではのお稽古場の雰囲気だと思いました。集団対1人だと、全体の中に埋もれてしまうことがあります。でも、1対1だと、真剣勝負の濃い時間になります。これまで習い事をしたことはありましたが、先生1人対大勢の教室生という中しか経験がなかったので、1対1がとても新鮮でした。 最後に、「一度で覚えて帰るなんて、泥棒と一緒よ。通常は何度も何度もやるのだから。今日は、お辞儀をひとつきちんと覚えて帰って下さい。」と言っていただき、救われた気がしました。ということで、その日わたしは「腰から折るお辞儀」の稽古をつけて頂きました。ありがとうございました。先生からは、いろいろなお話も伺ってきましたので、次回も引き続き日本舞踊のお稽古体験レポートです。 中編 −踊りは何を表現しているのか?− 後編 −「踊り」の歴史と、それぞれの流派−
2才より日本舞踊をはじめ、3才で初舞台をふむ。15才で坂東流師範を許され古典を中心に勉強し舞踊の道を志す。 平成7年8年と日本舞踊社主催みそみ会で「年増」「まかしょ」にて入賞。平 成8年より日本舞踊協会主催の新春舞踊大会にて「供奴」「玉屋」で奨励賞、「源太」「年増」「流星」で大会賞、平成13年度特別賞文部科学大臣奨励賞をもって卒業し現在にいたる。 古典舞踊をライフワークとすると同時に、創作研究グループにも所属し作品づくりに関わり振付も手がける。現在、横浜に稽古場を持ち指導をしながら古典、創作を問わずいろいろな舞台に出演している。 |
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